第2回 5月24日 小澤祥司 講演概要

 

人類とエネルギー
人類は50万年ぐらい前のホモ・エレクトス(原人)の時代から、木を燃料にし、食べ物を加熱することが出来るようになった。その後つい最近まで私たちが使っているエネルギーの殆どはバイオマス燃料であった。
 日本においても、昭和20年代初めごろまで、山の木は唯一の燃料で、煮炊きは薪、暖房は殆どなく、それでも山はハゲ山が広がっていた。
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世紀の半ばに石炭を効率よく掘れるようになり、産業革命がおこり、その後エネルギー利用がどんどん増え、大量生産・大量消費・大量廃棄という文明のパターンが20世紀のはじめに出来上がった。

 

人口とエネルギー消費の増大と限界
1850年代から現在までの150年間で、人口は5.5倍に増え、1人あたりのエネルギー消費量は9倍強、全体のエネルギー消費量は50倍に増えている。2050年くらいに世界人口が90億と予想され、70億の今も一人当たりのエネルギー消費量は伸びている。どこかで頭打ちになり、オイルショックのようなものが来るだろう。石油も石炭も天然ガスも、永遠に掘り続けられるものではないし、原子力燃料のウラン235も限られている。

 

在来型石油資源の枯渇
 IEAによると在来型石油産出量は2006年がピークだった。これから頼れるのは非在来型の石油系資源になる。非在来型とは掘削、精製により多くのエネルギーを使い、CO2排出量が多くなる。コストがかかるので、価格も上がる。22世紀になれば、掘るために使うエネルギー以上のエネルギーが得られるかどうかを考えなくてはいけなくなる。

 

日本の電力史
 戦前の日本の電力会社は完全に自由で、小さな電力会社が多くあったが、1938年、国家総動員法が出来ると電力会社が統合されて、国策事業として1つの大きな電力会社になってしまう。これが戦後それぞれの配電の地区ごとに別れて9電力会社になり、今まであった小さな発電施設も全部9電力会社の持ち物になる。当初水主火従といっていたのが、火主水従になり、そして70年頃から原子力がそこに加わってくる。

 

 

 

日本の一次エネルギー供給と最終消費の実態
日本の一次エネルギー供給量に対し、最終エネルギー消費はその3分の2ぐらいである。それを使うところでも損失があり、有用エネルギーは結局3分の1くらいになっている。そこからも、例えば冷暖房などのエネルギーは窓から逃げていき、損失になっている。本当に必要なエネルギーは供給量の1,2割くらいかもしれない。

 

非効率な電気の利用
二次エネルギーである電気はどのような形態にも変えられる便利で、質の高いものだが、原理的に発電するときにロスが出る。原子力発電は3割くらいしか電気にならない。
大規模集中型の遠くにある発電所から運ばれて来ると60%が発電所で失われ、送電ロスも5%ある。家庭や業務での電気の利用は50%くらいと高く、より電化傾向にあるが、利用実態は50,60度の熱源ですむ暖房等にも電気を21%使っている。もし発電所が小規模で近くにあれば、発電時に捨てている熱が使える。家庭用の燃料電池で、電気を起こし、その時の熱もいっしょに使うコジェネレーションでは、供給量は56%ですむ。何軒かでそういう装置を持ち、熱需要の大きいところと組み合わせていくと非常に効率的になる。これが地域熱供給である。電気の需要は日本全体で4分の1くらいしかない。

 

コミュニティ・エネルギー・システム
十数戸の街区レベルから町や村レベルのこじんまりしたシステムが熱も電気も両方一番効率よく使える。電気は比較的広域にネットワークし、それに各コミュニティのネットワークがうまく結びついているクラスター型の構造にだんだん変えていくことが必要ではないか。
 そうすると、再生可能エネルギーが活きてくる。より少ないエネルギーで現在よりも豊かで快適に過ごせる社会をつくることができる。

 

エネルギー消費量を減らす方法
方法は二つある。一つは省エネで、使う場面での最終エネルギー消費の削減である。これには節電などの行動の省エネと、機器の効率化や建物の断熱化など構造の省エネがある。
もう一つは作り・運ぶ場面での一次エネルギー供給の削減である。エネルギーの質に応じた効率的な利用で、コジェネレーションなどはその例である。これにはシステムを変えないとできない。ポイントは低温の熱である。構造やシステムの変更には時間がかかる。

 

太陽熱利用の例
 太陽熱利用システムのエネルギー効率は4060%と非常に高い。家庭では低温の熱利用が6割くらいあり、敢えて温水を高温にせず、暖房や給湯にこれを使えば高効率になる。
 冬に室内に入る太陽光で熱容量の大きいコンクリート製や石の床・壁に蓄熱し、夜間放熱させる無暖房住宅の例もある。これとは逆に、夏の昼間は外気の熱を遮断し、夜間冷気を取り入れ蓄熱体に貯めるパッシーブクーリングという方法もあり、実用化されている。
 

 

木質バイオマスの例
燃料が化石燃料に置き換わり、外材に押され、日本の森林蓄積量が非常に大きくなっている。これをうまく利用しようと木質バイオマスが注目されている。しかしプロセスが増えれば増えるほどエネルギー回収率は悪くなる。バイオマス発電の効率は20%程度で、元が再生可能だといっても、これを持続可能だとは言えない。バイオマスは低温の熱として使うのが最も効率が良い。

 

低温排熱の発電利用の例
バイナリー発電により、低い温度で発電できるシステムが有る。発電効率は低く、数%からせいぜい10%ぐらいしか取れない。しかし他に使い道がなくて捨てている熱だったら、十分使えると思う。工場廃熱や変電所廃熱など、使い道のない廃熱はあちこちにあり、これを一つ一つ拾い集めるとかなりの量になる。

 

未来のエネルギー社会
今、鉱物性燃料が輸入額の3割近くを占めている。再生可能エネルギーだけで自給できる社会になれば、これがゼロになり、その費用は国内にまわり、国内の活性化や雇用に結びつけることができる。
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世紀型の文明は既に限界にきている。今は石油の時代のピークを迎えていて、後は右肩下がりだ。22世紀の半ばぐらいには本当に残り僅かという世界になるかもしれない。これをカタストロフィで迎えるのか、今から準備していくのか。

 

その時生きていないというのは無責任である。今年生まれた赤ちゃんは22世紀を迎えることになるのだ。
                               (文責:二宮豊)