第3回 6月14日 原発の是非―その判断の根拠は? 講師:稲場秀明氏 

 原発問題は賛成と反対が極めて明確に分かれていて中間がなく、平行線のまま来ている。この対立をどう克服するのか。市民参加、一人一人の国民がこの議論の中に参加して、世論を形成していくのが一つの道ではないか。
この場合もどちらかの意見のコピーではなく、十分検討したうえで自分の意見が変わってもいいという態度が必要ではないか。
 

エネルギー使用の歴史と原発
エネルギー利用は人類の生活の幅を大きく広げたが、貧富の差の増大、事故や公害問題も発生、便利な暮らし、快適な暮らしへの欲望も増えていった。
 原子力はベースロード電源の役割を果たしたが、大きなマイナス面もある。
 
 

原発の抱えるリスク(軽水炉)
① 過酷事故 炉心熔融、炉内の温度と圧力上昇に伴い水蒸気爆発や水素爆発の起こる

 リスクがある。 
② 高レベル放射性廃棄物の処理・処分の方法が確立していない。
③ プルトニウムは核兵器の拡散やテロの危険性があり、核武装の疑念をもたれる。
 
 

放射線被曝について
 国際組織ICRPの基準は(平常時の年間許容放射線量は1mSv、事故後は120mSv、緊急事態の場合には20100mSv100mSv被曝した場合の生涯のがん死亡リスクは0.5%増える。)ほとんどの科学者が認めるものだが、1mSv以上100mSv以下での健康被害の有無については意見が異なる。理由は実験ができないからで、むしろ放射線社会学の問題であるという人もいる。
 
 

自然放射能と人工放射能
・自然放射能は日本では平均2.1 mSvである。食品の新基準は自然放射能と同程度の厳しさである。
・医療被曝は、治療を除き日本人一人当たり平均3.8mSvである。
 
 

原発の経済性
今までは比較的、原発は安いといわれてきたが、内閣府国家戦略室のコスト検証委員会の再試算(20111213)では、8.9円以上で火力発電、地熱、陸上風力とも同等ぐらいだ。

原発の環境への影響
電源別kWh当たり二酸化炭素排出量は原子力:22 g、水力:11 gLNG火力:608 g、石油火力:742 g、石炭火力:975g
しかし、原発は
高レベル放射線性廃棄物の処分の問題がある。

核燃料サイクルについて
燃料再処理
再処理はウランとプルトニウムを取り出して、あとはガラス固化して地層処分する。再処理工場は、トラブル続きで稼働時期を20回延期している。青森県は再処理を前提で使用済み核燃料を受け入れており、そうでなければ各原発に返すと言っている。


高速増殖炉
 原理的には軽水炉の100倍以上ウラン資源を有効に利用できる。高速増殖炉実用化のための原型炉であるもんじゅは度々事故を起こして実用化目標が2050年となっている。また原発を運転し続ける前提がないと意味がない。
 
 

高レベル放射性廃棄物の処理・処分

 高レベル廃棄物は、少なくとも10万年程度にならないと、放射能が減衰しない。核種変換技術の開発計画はあるが時間がかかり、安全性の高い中間貯蔵施設を作るべき。
 
 

原発問題に対する日本のマスコミの論調

 朝日、毎日、東京新聞は脱原発、読売などは推進で、両者の発行部数は拮抗している。マスコミは自分の都合の良いことだけを言っている。
 
 

原発の是非に関する提言
考え方:比較リスク論(総合的に見てリスクの低い方を取るという考え方)
原発を将来ゼロにするということをなるべく早い時期に宣言すべきである。
理由;コスト的に見ても割高、過酷事故のリスク、使用済み核燃料の処理・処分、再生可能エネルギーの普及促進。
原発の再稼働の是非は安全性を厳重にチェックした上で決めるべきである。 一方、再稼働を全く認めないというのは少し無理がある
理由;審査を厳しくし、安全態勢を十分チェックすれば過酷事故の確率はかなり低いと考えて良い。原発ゼロにすれば、国富が失われる。電気代が値上がり、中小企業が打撃を受ける。雇用が阻害される。一般家庭も影響を受け、特に低所得層の打撃が大きい。
・再処理、高速増殖炉などの核燃料サイクル事業はなるべく早く中止し、使用済み核燃
料の処理・処分および廃炉の問題に取り組むべきである。
理由;技術的な困難。コスト的に割高。再処理事業は原発が定常的に運転されていることを前提。高速増殖炉実用化のための原型炉であるもんじゅも同様。
 

 

(文責:二宮豊)