第5回 7月12日 スウェーデンのエネルギー事情 ~原子力の将来~            須永 昌博氏

スウェーデン人と母なる自然

 

 極寒の中で生き延びる知恵が現在のスウェーデンのみならず、北欧諸国の原点になっている。自分を自然の中において、一人でもそこで生き延びる力を持っている。いつも自然を鏡として自分を写してきている。自分を客観視し、自然と距離を置くことにより、物事に対する論理的、合理的な思考方法が涵養され、彼らの人格形成、物の考え方のベースになっている。その上に平等とか人権という概念、論理がうまれてきている。その意識がベースになって民主社会ができている。

 スウェーデンでは生まれた時から死ぬまで国民は社会のもの、全て社会が責任をもつ。

 人間は本来怠惰であり、放っておけば何もしない。だから、規範が必要で、法を作って律するのが社会であると考えている。

  

国の形

 国の基本は税金である。税金の源は産業である。産業の源は人材である。人材を生み出すのは教育である。教育環境を作るのは法律である。法律をつくるのは国会である。国会議員は選挙で選ばれる。選挙を行うのは国民である。こういうサイクルで動く。

 スウェーデンの投票率は85%から90%で、議員は国民の大多数の支持により選ばれている。高い投票率の要因は就学前教育にあり、そこで遊びや、歌、教材をなど通じて、人間社会のありかた、社会の仕組みを学ぶ。民主主義の核は全ての人の同等の尊厳と人権であると捉えている。

 選挙を通じて自分の意見を代弁してくれる政党を選ぶというのが民主主義だ。(議員は8政党のどこかに属さなければならず、比例代表制、国会は一院制、地方議会とも連動し、ねじれはなく、国民は政党に投票する。)

 法律を作る時に、多数党から少数党まで、8つの政党の議員の代表が集まって、3ヶ月、4ヶ月議論する。出来た法律を追跡する委員会があり、問題があれば改訂する。

 憲法に変わる4つの基本法のうち、2つが「知る権利」と、「表現の自由」であり、18世紀の半ばにできている。この二つはエネルギー問題を考えるときの一番大きなキーワードではないか。

 中央政府は地方政府のやることに干渉してはならないと明文化されている。所得税は全部住民税で、その県と市の地方財源になっている。国はその使い道、集め方に干渉してはならない。

  

スウェーデンの環境政策

 4つの柱がある。キーワードが「持続可能な開発」で、核になるのが環境法典と土地・環境裁判所である。

 環境品質目標で16分野を決めていて、世代間目標としてきれいな空気、健康的な住環境、自然を楽しむ豊富な機会を次の世代に渡していこうとしている。

 環境法典の柱は、加害者支払い、製造者責任、用心警戒原則、予防原則である。

 ネルギーを含めた環境問題に対し彼らは「人間が土地を活用する活動は全て環境破壊行為である。」と認識し、それを前提として法律を作り、規制している。

 許認可を出すのは環境裁判所である。過去の証拠を集めて裁判するのが通常の裁判所であり、環境裁判所は未来のことを探るもので、基本的に違う。たとえば風力発電所作ったら、明日どうなるの、10年先、20年先、100年先はどうなるかと考える。

  

スウェーデンのエネルギー政策

 エネルギー政策の基本は「持続可能な社会をつくるため」としており日本にはこれがない。

 再生可能エネルギーが非常に盛んで最先端をいっているが、それはエネルギー全体であって、電力についてはほとんど水力と原子力である。

 一番力を入れて、実用化が進んでいるのが、木材チップである。バイオマス熱電力供給プラントCHPだ。地域冷暖房で、自治体が運営している。このようなプラントがスウェーデン全体で260箇所位ある。

 再生可能エネルギー促進のため、ひとつは法律を定める。メンタルなものではなく、必ず誘導策になる税制をつくる。もう一つはグリーン電力証書制度がある。発電と送電、売電が分かれており、売電会社だけで今、200社ぐらいある。売電会社は自然エネルギーを使った発電会社からマーケットで買い取らなければならない。

 技術的には他の国もそれほど違いはないが、問題はそれを実際に実用化する仕組みが出来るかどうか、それと税制とどう噛み合わせていくか、それが再生可能エネルギーのキーワードではないかと思っている。

  

原子力発電

 スウェーデンと日本の原発との大きな違いは、スウェーデンは自ら設計図を描いてつくっている。日本はウェスティングハウスなどが設計し、建設まで全部やって鍵を受け取ったのが、東電等であり、極端にいうと内部を全然知らない。

  スウェーデンはあらゆることに国連の憲章、国連の協定を自分の国に持ってきて、それをベースにして法律を作っている。電力会社が機器の納入会社に発注する時の基準も国連世界協定で、まず人権の尊重、賃金労働時間など、様々な要件がある。それから環境法典などの環境保護に関する法律を順守しなければならない。ここから信頼感が生まれる。

  

エネルギーと原子力政策の特徴

 スウェーデンはそのエネルギー政策の基盤を持続可能社会の構築におく。そのために、現在、社会が抱える問題を次世代に残さない努力を続ける。そこには気候変動への対策として、あらゆる方法を実施する努力がみられる。実施の為には税制を利用することが現実的であり、効果が高い。それに従うことがスウェーデン市民の自立である。

 原子力や廃棄物処理など、市民は自己の判断で、政府が行う施策に支持を表明している。そのためには「知る権利」と「情報公開」が前提となっている。

 持続可能な社会とは次の世代に負の遺産を残さないということだが、全部綺麗に片付けことは出来るわけが無い。だから正直であるということが一番の基本である。

 

(文責:二宮豊)