第9回 9月6日 ドイツの景気拡大とエネルギーシステムの転換 講師 梶山惠司氏

 エネルギーシステムの転換は再生可能エネルギーだけではない。エネルギー効率を向上し、エネルギー消費の全体を削減していくこととセットだ。今のドイツのエネルギー政策の起源はCO2、地球温暖化、気候変動問題に出発点がある。

 小規模分散型エネルギーシステムにつながる。これを支える担い手は、様々な地域の人達が主体になる。再生可能エネルギーの推進は、エネルギーの民主化、それぞれの国の民主的なプロセスの成熟度が反映されるのではないか。

 

【ドイツの再生可能エネルギーの実際】

 ドイツは既にFITを導入して14年経ち、様々な成果、課題が明らかになってきている。再生可能エネルギーの発電量の推移は2013年に全発電量における比率は25.4%に達した。25%でも、送電網の強化というのはテーマになっても、蓄電池などは余りテーマになっていない。蓄電池はコストが高く、寿命があり、キャパシティを超えると貯めることができないので、あくまでも部分解決的な考え方である。スペインの場合は総発電の5割以上を風力が一時的にしめることもあるが、発送電分離をして、蓄電池などは使わず送電会社が全部需給バランスをやっている。

 エネルギーの最終需要の形態では、熱として使うのが5割、運輸燃料と電気が25%ずつぐらいで、体系的に捉えるためには、熱も不可欠である。

 再生可能エネルギーの発電量が今は15GWH、熱の利用量が13GWHである。熱の主なものはバイオマスだ。

 2005年から特に経済が相当好調で、日本と比較すると、GDPはドイツの方がエネルギー消費を削減しながら、ずっと力強く成長している。日本の場合は経済成長に伴ってエネルギー消費も増えるという、20世紀型の成長パターンを未だに続けてきている。ドイツの場合は、途上国と競合する産業は国内には残っていない。全てニッチ型か、途上国では作れないものなどの産業になってきている。

 ドイツは今の為替で、大体kwhあたり40円ぐらいまで電気代は上がって、不満が高まってきていおり、いろいろ見直しが起こってきているのも事実だが、世界で最も低い再生可能エネルギーコストを実現している。

 ドイツは安い原発の電力を輸入しているから再生可能エネルギーが出来ると言われるが、データを見るとじつは大幅な電力輸出している。

  熱利用は13GWHだが、単純に石油に換算すると130億㍑。1㍑90円と仮定すると、1兆円超える。再生可能エネルギーの熱利用はバイオマスがかなりの部分占めるが、そのコストは石油の半分ぐらいだ。使う人もそれだけ安く出来てきている。熱は移動できないので作ったところで使う地産地消の典型で、地域の資金循環のベースとなる。

 

【再生可能エネルギーの地域での利用】

 再生可能エネルギー発電設備の所有形態は大体、個人が35%。それに農家、中小企業、地域の電力会社を合わせると大体3分の2が個人ないしは小規模事業者で、担い手は地域であることが見て取れる。

 バイオガス(家畜の糞尿、とうもろこしなどエネルギー作物を混ぜてメタン発酵させてガスを取り出す)を導入した場合に村がどういうふうに変わるか、100軒の集落の事例で見ると、だいたい油と電気で3600万円ぐらい毎年使っている。これはほとんどそのまま外に出て行くが、バイオガスを導入した場合、700kwの発電設備で、電力で8,000万円を超える売上、それに熱も地域熱供給網で供給して、トータルで1億超える経済効果が出てくる。このような例は2005年から急成長し今8000を超えるプラントができている。

 設備投資額は日本の電力10社合わせて2兆円ぐらいで、それに比べてドイツの再生可能エネルギーの設備投資の金額は25千億円ぐらいある。

 バイオマス(林業)が、農山村に非常に大きな富をもたらしてきている。チップの販売量が過去10年間で5倍になって、価格は2倍、売上高は10倍になって、全部そのまま林業側の所得だ。灯油の価格に比べるとチップの価格はだいたい3分の1なので利用者にもメリットがある。

 

【日本の再生可能エネルギー利用の現場】

 日本の再生可能エネルギーのポテンシャルは膨大である。太陽光はドイツより実質の稼働時間で2割ぐらい恵まれている。森林蓄積量は60億㎥でドイツの倍近くある。

  しかし、FITが入ったおかげでいろいろと発電は進んでいるが、その担い手は地域外大規模資本が多い。地元は単なる場所貸しに終わっている。バイオマス発電は5,000kW以上という大型ばかりの発電規模で、熱電供給が無い。地元の関与もあまりない。無理して発電をする意義がない。発電用のチップはものすごい品質の良いチップで、こんなに良いものを使う必要はない。バイオマスは副産物利用が原則。

  欧州ではバイオマスの設計者、ボイラーメーカー、メンテナンスがしっかりしている。 過去10年間ドイツの丸太価格はズーッと上がってきているし、チップは倍ぐらいになっているが、日本の場合はむしろ下がっている。

  

【日本とドイツの違いの背景】

 発電と熱が整理されていない所が多い。熱利用をもっと焦点を当てたほうが良い。日本のエネルギー政策体系がきちんと整理されていない。ドイツの場合は気候変動と地域貢献と個人・中小企業参加が上位概念としてきちんと整理されている。日本はただ単に再生可能エネルギーの拡大などの個別の目標になってしまう。

 再生可能エネルギーを支える組織機関がドイツはしっかりとしている。大学が現場密着型で、卒業してからすぐに現場で使えるようなバイオマスのエンジニアを育てている。またエネルギー・エージェンシーという、市民にいろいろサポートをする組織がある。そこに行って相談すれば、適切な設計や施工会社まで全部アドバイスしてくれる。地域エネルギー会社(自治体が出資)が電力と熱を総合的に扱い、地域の担い手になっている。権威ある研究機関の情報提供や信頼できるコンサルタントの存在も大きい。